この間、ある人のツイッターを通じてBS日テレの「サブ4」という番組で函館マラソンの模様が放送されると知り、9月27日の放送を録画した。函館は家内の実家でなじみがあるうえ、自分も第1回の函館マラソンを走っているので、ちょっと興味があったのだ。週末に時間ができたときにその録画を見てみた。
この番組は、3人の女性(女優、モデル、アナウンサー)がサブ4を目指して練習し、函館マラソンでその目標に挑むというもの。
ダメっ子は今回初めて見たが、4月から半年間にわたり練習の様子などが毎週放送されており、レース本番の今回は通常の2倍の2時間枠となっていた。
番組のウェブサイトによると、3人のランナーはそれぞれかなり前にフルマラソンを一度5時間台で走ったことがあるもよう。
録画した番組を見始めると、早速マラソンがスタート。
スタートから1km、1kmから2km・・・とかなり詳細にレースの様子が伝えられていく。4時間のレースを2時間の枠で放送するわけだから、スポーツニュースや普通のドキュメンタリーよりもかなり尺に余裕があるもんね。
それにしても、淡々としていて地味な番組だ。本当に自分がフルマラソンを走っているかのように淡々としている。こんなの走った本人以外が見て楽しんだろうか。
そんな感想を持ちながら最初は見ていたが、次第にのめり込んでいった。
3人の中で先頭を走る吉竹さんはフォームが良い。力みがなく、体の軸もぶれていない。
少し遅れて2番目を走る中村さんはガッツがある。3人の中でトップでゴールしてサブ4を達成したいという。
3番目の澤山さんはケガで走れない状態から、何とかスタートラインに立てるところまで持ち直してきたそうだ。走ることで、支えてくれた周りのみんなに感謝の気持ちを表したいと語っていた。
3人ともネガティブ・スプリットで走る計画らしく、序盤を抑えて入り、少しずつペースを上げていく。
天気は、ダメっ子が走った第1回と同様に雨。厳しい環境の中、みな淡々と走るが、後半に入り次第に疲れが出てきて、30キロに近づくと先頭を走っていた吉竹さんにも弱音が出る。
二番手の中村さんは、ケガで走れない時期もあったそうだが、そのときやっていた体幹トレーニングなどが功を奏したのか、30キロに達してもフォームが崩れず比較的元気。気持ちもポジティブだ。およそ3分差で吉竹さんを追っている。
ここから、この二人の対決が面白くなる。
33キロ辺りからは、函館マラソン最大の難所、ともえ大橋にさしかかる。ここは長い上りの後、小刻みなアップダウンがあるのだ。ダメっ子が走ったときは、ここで猛烈な向かい風が吹いて一気に体力を奪われた。
3人もここは苦戦。特に吉竹さんは大きくペースを落としたようだった。
前を行く吉竹さんのそんな状況を知っていたわけではないだろうが、中村さんは「私、出ます!後悔したくないんで!」と言って一気にペースを上げる!
橋を渡った後、しばらく走ると、またこの橋に戻ってくる。行きで足を削られた状態で、帰りにまたこの坂を上るのはとてもしんどい。
38キロ地点辺りだったろうか。帰りのともえ大橋でペースを落としていた吉竹さんに、中村さんがついに追いついた!
中村さんは喘ぎながら懸命に走り、吉竹さんとの差をどんどん広げていく。
40キロ手前でジェルを補給したときは、もう必死。息は乱れ、フォームも崩れる中、ただひたすらに前に進み、アゴについたジェルをぬぐう余裕もなし。女優である中村さんにしても、所属事務所にしても、そんな乱れたシーンをテレビに映されるのは望むところではなかったかもしれないが、見ている方は、とにかくその必死さに心を打たれた。
一方の吉竹さんは、フォームを整え直したのか、一時大きく落ち込んだペースをやや回復させたようだった。
かつての土佐礼子を彷彿させる必死の走りの中村さん。アゴは上がり、腰は落ち、フォームは乱れまくっているが、あと少しなので何とか最後まで持ちこたえて欲しい。
しかし、競技場に戻る少し前で、吉竹さんが再び中村さんに追いついた!
中村さんにもう追いかける余力はなかった。
そのままゴールして、確か吉竹さんが4時間4分台、中村さんが5分台のタイムだった。
澤山さんは、最後まで走りきり、スタート時点で目標としていた4時間半を切った。
サブ4達成は成らなかったが、全力を尽くした3人は感極まってゴール後に号泣。
「監督」の永井大もゴールした3人に声をかけながら大粒の涙を流していた。
ダメっ子も感動した。ダメっ子は今回のエピソードしか見ていないが、これまでの練習の過程も見ていた熱心な視聴者はもっと感動しただろう。
3人はテレビに出ている業界人かもしれないが、ランナーとしては一般人だ。そんな一般人の走る姿がこんなにも感動を呼ぶとは、市民ランナーの自分にとっても意外だった。
一般のランナーも、それぞれレースに至るまでの過程があり、レースの中でも様々な葛藤と戦っている。
それは大きなドラマなんだ。自分たちが取り組んでいるマラソンって、こんなにすごいことなんだ。
この番組を見て、そう思った。そしてレースに向けて毎日走る自分も、いっしょに走っている仲間たちも、とても尊い存在に思えてきた。
レースも頑張ろう。仲間のことも応援しよう。改めてそう思うダメっ子であった。