アメリカで現在、”Meb for Mortals“という本がランニング関連でベストセラーになっている。
アメリカの人気マラソンランナー、メブ・ケフレジギ(Meb Keflezighi)選手がマラソンの練習、食事、精神論などについて指南した本である。
ケフレギジ選手は子どもの頃エチオピアからアメリカに亡命し、後に帰化したという経歴を持つ。
2000年頃に全米トップクラスの長距離選手となり、2004年にはアテネ五輪にマラソンで出場。米国人選手としては1976年モントリオール五輪のフランク・ショーター以来となる銀メダル獲得を果たす。
しかし彼の人気を不動のものとしたのは2014年のボストン・マラソンだろう。前年のテロの影響で重々しい雰囲気のなか行われたこの大会で、39歳になる直前に自己ベストを更新、見事優勝を遂げたのだ。しかも米国人選手のボストン優勝は31年ぶりだったという。
フルネームはMebrahtom Keflezighiというが、おそらくこの名前が米国人にとって読みにくいこともあり、Mebの愛称で親しまれている。
さて、上記の本を出版しているRodale社の雑誌『Runner’s World』のウェブサイトに本の紹介記事があったので読んでみた。
記事は目標設定について書かれた部分の要約だった。
目標は以下の5つのポイントを押さえて設定すると成功に近づくという。
1. 自分にとって意味がある目標を定める。誰かの期待に応えるための目標ではなく、純粋に自分で達成したいと思う目標を設定するということ。そのような目標でなければ辛いときに自分を奮い立たせることはできない。
2. 具体的な目標を立てる。単に「速く走れるようになる」よりも「10キロを○○分で走る」といった目標にした方がよい。
3. 達成が難しいものの現実的な目標を設定する。例えば、ハーフマラソンを2時間で走った人が、次のハーフでのレースで同じ2時間を目標にしてもやる気は湧いてこない。また長距離走は段階的に記録が伸びるものなので、この人がいきなり1時間30分を目標にしても達成できない。
4. 期限を設ける。いつまでにその目標を達成するべきか期限を定めると、計画が立てやすい。ただしその期限は近すぎても遠すぎても意味がない。モチベーションを保つには3~6ヵ月後がよい。
5. 繰り返し目標を意識する工夫をする。目標を書き出していつも目につくようにしておいたり、身近な人に目標を教えておく。
いずれも目新しいことではないが、上記の3が特に印象に残った。自分に当てはまることが最近あったからだ。
私は3月の横浜マラソンで当初、3時間10分切りを目標にしていた。それまでのベストが3時間18分だったので妥当な線だと思っていたが、本番3週間前の35キロ走で1キロ4分20秒のペースで走れていたため、レース数日前に同じランニングチームの仲間からサブスリー挑戦を勧められたのだ。
35キロまで練習のとおり走れれば、残りをキロ5分で走っても3時間10分は切れる計算だ。つまり達成の可能性はかなり高い。達成できれば大幅な自己ベストとなり、自信につながると思ったが、仲間からはそんな「達成できて当然」の目標を掲げても意味がないと指摘されたのである。
私はサブスリーなど挑戦するにしても当分先の話で、その時の力ではとてもかなわないと思ったので最初渋ったが、せっかくの機会なので挑戦することにした。しかし結局のところ、サブスリーは達成できなかった。
この時の目標は上記5つの条件に照らすと、他人の期待に応える目標だった(条件1)、本番3日前の設定だった(同4)、という点で望ましくなかったことになる。しかし、やる気がかき立てられ、ワクワクする感じは今までのどの目標よりも大きかった。
横浜マラソンのレースを経て、サブスリーという目標は今や他人に勧められた目標ではなく自分自身の目標になった。そして次のレースはおよそ半年後、11月のさいたまマラソンになった。つまり、5つの条件のほとんどが満たされるのだ。
したがってメブの説によると、達成確率が上がることになる。いやぁ、11月が楽しみだ(笑)