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peerを訳すときの注意:同業他社に自社は含まれない

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こんにちは、ダメっ子のぴぴおです。

最近、他の人の翻訳をチェックすることがときどきあるのだが、多くの人の訳し方に問題があると感じる単語がある。

その一つがpeerだ。

まず言葉の定義から確認すると、基本的な意味は以下の通りだ。

(社会的に)同等の地位の人;同僚,同輩,(法律上の)対等者
『ランダムハウス英和大辞典(第2版)』 小学館

 

[usually pl.] a person who is the same age or who has the same social status as you
『Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Eighth Edition』 Oxford University Press

上の定義では人を表すことになっているが、対象は人に限らない。要は、集団を何らかの基準でグループ分けしたときに同じグループに属する各構成要素をpeerという。

ビジネス関連の文章では、「同業他社」という訳語が当てはまることが多い。

業種というくくりでグループ分けしたときに、同じグループに入る個々の企業のことをpeerと呼んでいるのだから、普通に考えると同業他社と訳して問題ないように思われる。

例えば、Company A is more popular than its peers. という文は、

「A社は同業他社よりも人気があります」と訳せる。

しかし、次のような文ではどうだろう。なお、peerは同じ業界の企業を表すこととする。

  • Company A has the most advanced technologies among its peers.

多くの人が、次のように訳す。

  • A社は同業他社の中で最も進んだ技術を持っています。

DeepLに訳させても、そうなった。

僕はこの表現に矛盾を感じてしまうのだが、どこがおかしいか分かるだろうか。

「同業他社」は、あくまでも「他社」を表す言葉であるから、自社(ここではA社)は含まれないことになる。

そうすると、上記の訳文は、A社自身が含まれない集団の中でA社が一番であるという表現になる。細かいようだが、そこに矛盾を感じるのだ。

そういう意味で、極端に言えばこの文は「焼酎は国民に一番愛されているビールです」というのと同じように矛盾している。

日本語の「同業他社」が自社を含まないのに対し、英語の”peers”は自社も含むという点に違いがあるので、その点を考慮せず短絡的にpeers=同業他社と訳していると、文脈によっては矛盾した日本語になってしまう。

上記の訳文には、次のような改善案が考えられる。

  • A社はこの業界で最も進んだ技術を持っています。
  • A社は同業他社よりも進んだ技術を持っています。
  • A社の技術は同業他社に比べて進んでいます。

信頼できる翻訳者たちは、「A社は同業他社の中で最も~」といった表現を使ってこないので、僕と同じ感覚を持っているのだと思うが、新人翻訳者はほとんどがこの表現で済ませてくる。日本語の感度を磨いてい欲しいところだ。

しかし、あまりにこの手の表現をたくさんみていると、だんだん自分の方がおかしいような気がしてくる。変な日本語に頭が冒されないためにも、正しい日本語をたくさん読む必要があるなと感じる今日この頃なのだ。

※ダメっ子が雑誌で紹介されました。下の雑誌の記事のどこかに登場しています。


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